場外〈Wins〉のはなし〈3〉

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錦糸町場外周辺の出目予想

京葉道路を渡ってすぐの所にあるのが錦糸町の場外です。この場外には数回ほどしか行ったことがないのに思い出すのはまだ、あの予想屋のことが鮮明な印象として残っているからです。
昭和50年代、バブルがやって来る10数年前の錦糸町はまだまだ下町情緒が漂う街でした。そんな街の風景に溶け込むように錦糸町場外馬券売り場はありました。その入口の一角には、何やら威勢のいいお兄さんを囲むように好奇心から立ち止まってそれを眺めている人だかりがあります。
「ほら!当たってるだろ!」「コリャすごい!」などの声が聞こえてくる。こういうのが好きなものですからその輪に加わり高みの見物を決め込むことにしました。「第1レースは買わずに見るだけダヨ。第1レースの目が分かれば、あとはこの本に書いてある目を買うだけダ!」「1点買いだから、前半の5レースに千円づつ賭けると5千円、午前中のレースで儲けた分を7レース以降6等分して、また1点買いする!」と、なんと夢のある買い方でしょうか。その兄さんは事前に用意した過去開催の第1レースの目をわら半紙の一番上に書き入れると、虎の巻を見ながらその下に”3-5、2-7″などと買い目を6レースまでマジックで書いていきます。

第2レースの結果をお兄さんのお友達風の男が言うと、そこで先ほどの「ほら!当たってるだろ!配当は1.860円ダ!」が聞こえてくるわけです。その声に圧倒されて見物人たちの間には、まるで買わなかったことを責められているような、怒られているような空気が支配します。一通り能書きを垂れたあと「つぎ、3レースはナニ?」とお友達風の男に促すと「6-7だけど」。「ほら!これも当たってるだろ!これで連チャンで大当たりダ!」とお兄さんはテーブルを手のひらでバーンと思いっきり叩く。しかし、お兄さんたちが出目予想しているレースは、前述のように過去のレース結果の載ったスポーツ新聞が情報源です。前半のレースで4レースくらいが当たっていましたので5千円の種銭が数万円ほどに増えました。後半のレースは1点5,000円賭けることができ、結果数十万円の儲けと相成るわけです。当時は未だ単勝・複勝・枠連しか発売がありませんでしたので、あまり高額配当は出ず万馬券なんてそうお目にかかれるものではありませんでした。また百円券、2百円券を売っている場外も限られており、5百円券や千円券(特券と呼んでいた)で滅多に出ない万馬券を買うのはあれこれ考えてしまいます。
一通りやり取りが終わると、お友達風の男が何やら財布の中からスポーツ新聞のレース結果が掲載されている部分だけを切り抜いた古くなって変色したそれを取り出し
「兄ちゃん、競艇でもいいかい」
「レースなら何でもできるよ」
「じゃあ、住之江競艇を当ててみてくんないか?」と、唐突に住之江競艇?それなに?せめてこの辺でなじみのある江戸川競艇あたりならまだしも、大阪にある競艇場はなじみがない。ここにいる多くのやじ馬は競馬フアンなんだし。
「第1レースの目はナニ?言ってみて!」となり、虎の巻を見ながら2レース以降の出目を書き写すと、二人のやり取りが再び行われ「当たった、当たった」と、ここでも最終的に数十万円の儲けが出るのです。が、リアルタイムの出目予想はしない?ようです。せめて午前中の結果だけでも見たいものです。
そんな「出目の虎の巻」を錦糸町の場外そばで販売していました。考えてみれば競艇は6枠、競馬は8枠、どうなっているかは定かではありませんが。

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