公営ギャンブル〈1〉競艇場に行ってみた

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ひとりで競艇場に行ってみた

一応、某新聞社の片隅に籍を置いていた昭和50年ころの師走のお話です。
取材を終え担当者と昼食を共にし、店を出るとまだ午後2時前だったような。別れてJR総武線の平井駅前に着くと、江戸川競艇が開催中らしく無料送迎バスが止まっており、客を飲み込まんばかりに乗車口のドアを大きく開けワナを仕掛けていました。その年の師走はギャンブルのバイオリズムが上昇中で、餅つき競馬(当時は師走開催をそう呼んでいた)では成績が良く、おまけにボーナス後で懐が暖かいせいもあり意思とは関係なく(?)体はバスの乗車口に吸い込まれ、気がつくと競艇場に足を踏み入れてまんまとワナに掛かってしまったのです。
競艇には2〜3度行ったことがありますが、ひとりでは初体験です。その頃、お正月には初詣とは別に親やら親戚とその知人、義兄弟など男10人近くで平和島競艇、川崎競馬、大井競馬そして今はなき花月園競輪と開催中の公営ギャンブルにお参り(?)に行って厄払いをするのが習わしでした。

専門紙を買っていざ

いくら競艇の知識がなく当てずっぽうで舟券を買うにしても専門紙くらいは欲しいものです。そこで適当に見繕って買った1紙を手に取り検討に入るわけですが、競馬ならまだしも競艇新聞の見方は全く分からないので、とりあえず正攻法(?)で印と相談しながら舟券を買うことにしました。ひとレースに使う予算は2,000円で3点買いと決めて買い目を絞り込みます。出走表の選手名を見ていると高校の時にこんな名前のヤツがいたなと思い、とりあえずその選手から3点買っていざスタンドへ。締切間際に買えたレースを幸先良く的中したのでこの後全敗しても少しはプラスになると考えて欲はありません。今から考えるとそんなことで良く舟券を買ったものだと思いますが、前述のようにバイオリズムが絶好調だったのです(笑い)。プラス分を次レースにつぎ込むこともなく決めた予算でふたレースを名前予想で的中させ、当時の給料の半分くらいは浮いた計算です。

聞いてはいたが・・・まさか遭遇するとは

穴場傍の壁にもたれて良い気分で新聞片手にレース検討(?)をしていると
「やぁ、久しぶりじゃん。元気にしていた」となれなれしく40歳代の男が声を掛けてきました。顔を上げながら、こんな所で久しく会ってない知人から声を掛けられるはずもないと思ったものの、その男の顔を見て頭の中では「誰だっけ?」と思うも知り合いではないと判断して無視。と同時にコーチ屋という職業(?)が存在するのを思い出しました。まさか自分が話に聞いていたコーチ屋に遭遇するとは思いも寄りませんでした。男が
「いま新聞社から情報が入って、このレースは荒れるらしいよ」と話しかけてくるものの無視していると、自分の後方から別の男が近寄ってきてコーチ屋の男に
「さっきはありがとう。けっこう儲けさせてもらったよ」と言って何やら膨らんだ財布を男にではなく、むしろ自分に見せつけるように取り出します。
「そりゃ良かった。また新聞社から情報が入ったら教えるから」
「そうかい、頼むよ」といいながら仲間の男は去って行く。とコーチ屋の男はどうだと言わんばかりの口調で
「どう、買い目を教えるから一緒に買いに行こう」と言いながら、私を穴場の方に連れて行こうと促します。私は「いいよ!」と言って再び壁にもたれて検討を始めます。しばらくして買い目が決まり穴場の方へ歩いて行くと、先ほどの男が次の客を見つけて再び「やぁ、久しぶりじゃん。儲かっている?」と声を掛けていました。

コーチ屋と言われる職業(?)は

たまたまコーチ屋のことを知っていたので、引っかからずに済みましたが気をつけましょう。あの膨らんだ財布に興味を持って話に乗ってしまった客は、穴場まで一緒について来た男に舟券を何点か買わされます。何人かに声を掛け客を増やすことがありますが買い目はみんな違うこともあり、誰かが当たればいいわけです。客はマークされ当たった場合どこからともなくコーチ屋が現れ、払戻金からコーチ料を請求されるわけです。当たらなければ知らんぷり。もしあとで客に遭遇して「当たらないじゃないか!」と詰め寄られても責任逃れの言葉を並べて立ち去ります。そりゃ百戦錬磨の海千山千の方たちですから。なかには「舟券を買ってきてあげるよ」と言ってお金を預かりそのまま逃げてしまうこともあるそうなのでくれぐれも注意しましょう。一度見た客の顔を憶えられる才能があれば良い営業マンになれるのにと思います。

その日は半日サボってしまいましたが、金運のバイオリズムが良く給料以上の儲けがでました。本来ならタクシーで帰社と言った所でしょうが、根がケチなので競艇場から夜景を眺めながらバスで銀座まででました。そんな金があったら競馬に使います。そのとき以来競艇とは遠ざかっています。賭事はツキのある人間が勝つ。後日、家内に舶来の腕時計をプレゼントしたことを蛇足ながらお伝えします(自慢するな!)。

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